示談書の書き方
示談書は、争いごとを裁判によらず当事者間の合意で解決したことを記録する書面です。示談が、互いに譲り合って争いをやめる約束なら、民法の和解(695条)に当たり、和解で決めた権利は、後で違う証拠が出ても和解のとおりに確定します(696条)。つまり、一度成立すると原則としてやり直せません。特に末尾に置かれる「清算条項」は、書かれていない請求権まで消してしまう強い条項なので、署名前に必ず内容を理解する必要があります。
示談書の書き方 5ステップ
- 甲と乙を書く(住所を書く欄は無いので、要るなら書き添える)
- 発生日と事案の内容を書いて、どの事故や出来事かを特定する
- 示談金額と支払方法(期日を含む)を書く
- その他の条件に、清算条項・留保する事項・口外しない約束などを書く
- 締結日を入れ、2通作って双方が署名押印し、1通ずつ持つ
記入項目の書き方
- 発生日・事案の内容:例の「2026年3月15日、東京都新宿区の交差点にて…接触事故」のように、日時と場所で一つに決まるように書きます。
- 示談金額:金額を書きます。何に対する支払いか(治療費・慰謝料・修理費など)を分けたいなら、その他の条件に書きます。
- 支払方法:一括か分割か、期日と振込先。分割なら、1回でも遅れたら残りを一度に請求できる取り決め(期限の利益の喪失)をその他の条件に書きます。
- その他の条件・清算条項:「本件に関し、本示談書に定めるほか一切の債権債務がないことを相互に確認する」と書くと、ほかの請求はしないという合意になります。
- その他の条件・留保する事項:後遺障害など後で分かるものは、「本件事故に起因する後遺障害が判明した場合は別途協議する」と残しておきます。
- その他の条件・口外しない約束:入れるなら、範囲と期間を書きます。
書き方の注意点
- 清算条項は強い:「これ以外に請求しない」という合意なので、後から損害が分かっても、請求は難しくなります。人身の事故では、とくに慎重に決めます。
- 治療中の示談は急がない:治療が終わらないうちに示談すると、その後の治療費や後遺障害の賠償を受けられなくなることがあります。
- 公正証書にする意味:金銭の支払いについて、公証人が作った公正証書に「直ちに強制執行に服する」旨(強制執行認諾文言)を入れておくと、執行証書として、払われない時に裁判をせずに強制執行ができます(民事執行法22条5号)。分割払いの示談で役に立ちます。
- 未成年者の示談:未成年者が法定代理人の同意なしにした示談は、取り消せます(民法5条)。親権者が子を代表して結ぶか、同意を得て結びます(5条・824条)。
- 刑事事件との関係:検察官は、犯罪後の情況なども考えて、起訴しないことができます(刑事訴訟法248条)。示談はその事情の一つとして考慮されることがありますが、示談したから必ず不起訴になるわけではありません。
- 収入印紙:印紙税がかかるかは、題名ではなく書いた中身で決まります(国税庁 No.7100)。示談金を受け取ったことを証明する書き方なら、金銭の受取書(第17号文書)に当たることがあります。商人でない個人が受け取る時は、営業に関しない受取書として非課税です(No.7105)。
よくある質問
Q. 示談書に署名したら撤回できますか?
A. 原則としてできません。詐欺や強迫を受けた時(民法96条)や、重要な錯誤があった時(95条)は、取り消せる場合があります。
Q. 示談書は手書きでも有効ですか?
A. 有効です。契約は書面の方式を問わず成立します(民法522条2項)。形より、合意した中身がはっきり読み取れるかが大事です。
Q. 清算条項は必ず入れるべきですか?
A. 支払う側は入れたい条項、受け取る側は慎重に判断すべき条項です。将来の損害が読めない事案では、留保を付けることを検討してください。
参考(2026年11月時点):民法(e-Gov法令検索)・民事執行法(e-Gov法令検索)・刑事訴訟法(e-Gov法令検索)・No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断(国税庁)・No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書(国税庁)