覚書の書き方
覚書は、当事者間の合意を簡潔に書き留めた書面です。よく「契約書より軽い」と思われていますが、契約は申込みと承諾がそろえば成立し、書面の方式も問われません(民法522条)。そのため、表題が「覚書」でも、合意の内容が書かれていれば、契約書と同じように合意として扱われます。実務では、既存契約の一部を変更する場合や、契約前に基本方針だけ確認する場合に使われます。
覚書の書き方 5ステップ
- 甲と乙を、原契約と同じ表記で書く
- 原契約の名前と締結日(番号があれば番号)を書いて特定する
- 合意事項を、変える条項と変更前・変更後が分かるように書く
- 効力発生日と締結日を入れる
- 署名押印し、原契約と一緒に綴じて保管する
記入項目の書き方
- 甲・乙:原契約と同じ表記(会社名か氏名)を使うと、どの契約の当事者かがはっきりします。
- 原契約名・番号:例の「業務委託契約書(2025年4月1日締結)」のように、名前と締結日で特定します。
- 合意事項:「原契約第◯条を次のとおり変更する」として、変更前と変更後を並べて書きます。最後に「本覚書に定めのない事項は原契約による」と入れておくと、ほかの条項が生きていることがはっきりします。
- 効力発生日:いつから適用するか。さかのぼって適用するなら、その旨を合意事項に書きます。
- 締結日:双方が合意して署名押印する日です。
書き方の注意点
- 契約書と同じく合意になる:表題ではなく中身で判断されます。「覚書だから守らなくてよい」ということはありません。
- 収入印紙も中身で判断:原契約の「重要な事項」(文書の種類ごとに印紙税法基本通達 別表第2に例示)を変える覚書は課税文書になり、重要な事項を含まなければ課税文書に当たりません。原契約が1つの号の文書だけに当たる場合は、その号の文書になります(国税庁 No.7127)。金額を増やす覚書は増えた分が記載金額、減らす覚書は記載金額が無いものになります(変更前の契約書が特定できる場合・No.7123)。
- 何を変えたかをはっきり:「一部変更する」だけでは、何が変わったか分かりません。変更前と変更後を並べて書くのが確実です。
- 拘束力を持たせない場合:方針の確認にとどめたいなら、「本覚書は法的拘束力を有しない」と書いておきます。書かないと、拘束力のある合意として扱われるおそれがあります。
- 原本の管理:原契約と覚書は一緒に保管します。覚書だけ残っていると、何を変えたのか分からなくなります。
よくある質問
Q. 覚書と契約書はどちらが強いですか?
A. 表題による優劣はありません。後から交わした覚書は、その部分について新しい合意になります。
Q. 覚書に収入印紙は必要ですか?
A. 中身によります。原契約の重要な事項を変える覚書は課税文書になり、原契約が1つの号の文書だけに当たるなら、その号の文書になります(国税庁 No.7127)。金額を増やす覚書は増えた分が記載金額、減らす覚書は記載金額が無いものになります(変更前の契約書が特定できる場合・No.7123)。
Q. 口頭の合意を後から覚書にできますか?
A. できます。口頭の合意は証拠が残らないので、後からでも書面にしておきます。
参考(2026年11月時点):民法(e-Gov法令検索)・No.7127 契約内容を変更する文書(国税庁)・No.7123 契約金額を変更する契約書の記載金額(国税庁)・No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断(国税庁)