賃貸借契約書の書き方
賃貸借契約書は、建物や土地を貸し借りする条件を定める契約書です。建物の賃貸借には借地借家法が適用され、借りる側を守る決まりが置かれています。そのため、更新や解約の決まりに反して借主に不利な特約は、契約書に書いてあっても無効です(同法30条)。「期間が来たら更新せずに出て行く」という約束は、定期借家の要件を満たさなければ効力を持ちません(38条)。
賃貸借契約書の書き方 5ステップ
- 物件を特定する(物件名・所在地・面積)と使用目的を書く
- 契約開始日と終了日を入れる(定期借家にするなら、契約の前に別の書面を渡して説明する)
- 賃料(月額)と支払日を書く
- 敷金・保証金の額を書く
- 更新・解約の予告・原状回復・保証人の取り決めが要るなら別に書面で定め、署名押印する
記入項目の書き方
- 賃貸人(甲)・賃借人(乙):会社名か氏名を書きます。会社なら代表者名の欄も書きます。
- 物件名・所在地・面積:登記簿の記載に合わせると、どの物件かがはっきりします。エアコンや給湯器など付いている設備を書く欄は無いので、一覧にして別紙にしておくと、退去の時にもめません。
- 使用目的:住居・事務所・店舗など。借主は、契約で決めた使い方に従って使います(民法616条・594条1項)。
- 契約開始日・契約終了日:期間を定めた普通の借家契約は、期間の満了の1年前から6か月前までに更新しない旨などの通知をしないと、前と同じ条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条)。
- 賃料(月額):金額と、消費税を含むか(税込・税別)を書きます。共益費を別に取るなら、その額も書き添えます。
- 敷金・保証金:額を書きます。敷金は、契約が終わって物件を返した時に、未払の賃料などを差し引いた残りを返します(民法622条の2)。
- 支払日:例の「毎月末日まで」のように、いつまでに払うかを書きます。決めなければ、建物の賃料は毎月末に払うことになります(民法614条)。翌月分を前払いにするなら、そのことも書きます。
書き方の注意点
- この書式に入っている条文:印刷すると、入力した項目のあとに「反社会的勢力の排除」「協議解決」「合意管轄(被告の住所地の裁判所)」の3つの条文が入ります。更新・解約の予告・原状回復・保証人の条文は入っていないので、要る時は別に書面で定めます。
- 普通借家は簡単に終われない:貸主から更新を断ったり解約を申し入れたりするには、正当の事由が要ります(借地借家法28条)。「期間が満了したから出て行ってほしい」だけでは通りません。期間の定めが無い時に貸主が解約を申し入れると、申入れから6か月で終わります(27条)。
- 定期借家の要件:①公正証書などの書面(電磁的記録を含む)で契約する(借地借家法38条1項・2項) ②契約の前に、更新がなく期間の満了で終わることを書いた書面を渡して説明する(38条3項)。この書面は、契約書とは別の書面でなければなりません(最高裁 平成24年9月13日判決)。説明をしないと、更新がないとする定めは無効です(38条5項)。
- 借主からの解約:期間を定めた契約で、期間の途中に解約できるようにするには、その権利を契約で決めておきます(民法618条)。期間の定めが無い建物の賃貸借は、解約の申入れから3か月で終わります(617条)。
- 原状回復の範囲:借主は、通常の使い方による損耗と経年変化を元に戻す必要はありません(民法621条)。国土交通省のガイドライン(住宅向け)では、家具の設置による床やカーペットのへこみ・設置跡、日照による畳の変色やフローリングの色落ちは、貸主の負担とされています。通常の損耗を借主の負担にする特約は、①特約の必要性があり、暴利的でないなど客観的・合理的な理由がある ②借主が、通常の原状回復の義務を超える負担を負うと認識している ③借主がその負担をする意思を示している、を満たさないと効力を争われます。
- 保証人の極度額:個人が借主の保証人(連帯保証人を含む)になる時は、保証する上限の額(極度額)を書面で定めないと、保証契約は効力を生じません(民法465条の2)。
- 収入印紙:建物の賃貸借契約書は、印紙税の課税対象になりません(国税庁 No.7106)。ただし、敷地を貸す契約を結んだことが明らかなものは第1号の2文書、賃貸借の期間に関係なく据え置いた後に返す保証金(建設協力金など)の取り決めがあるものは第1号の3文書になります。
よくある質問
Q. 契約書に書けば何でも有効になりますか?
A. なりません。借地借家法の建物の賃貸借の更新・解約などの決まりに反する特約で、借主に不利なものは無効です(同法30条)。
Q. 更新料は請求できますか?
A. 契約書にはっきり具体的に書かれ、額が賃料や更新の期間などに照らして高すぎるなどの事情が無ければ、更新料の条項は有効とされています(最高裁 平成23年7月15日判決)。
Q. 定期借家と普通借家はどちらが有利ですか?
A. 期間で必ず終わらせたい貸主には定期借家、長く借り続けたい借主には普通借家が向きます。定期借家の要件(書面での契約・契約書とは別の書面での事前の説明)を欠くと、更新がないとする定めは無効になります(借地借家法38条)。
参考(2026年11月時点):借地借家法(e-Gov法令検索)・民法(e-Gov法令検索)・原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)(国土交通省)・最高裁 平成24年9月13日判決(定期建物賃貸借の説明の書面)(裁判所)・最高裁 平成23年7月15日判決(更新料条項)(裁判所)・No.7106 建物の賃貸借契約書(国税庁)・No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで(国税庁)