雇用契約書の書き方
雇用契約書は、会社と労働者が労働条件について合意したことを示す契約書です。労働基準法で決まっているのは、契約の時に会社が労働条件を明示すること(重要な事項は書面を渡す・同法15条・施行規則5条)で、雇用契約書という形の書類を作ることまでは決まっていません(労働契約法4条2項は、契約の内容をできる限り書面で確かめるものとしています)。それでも作るのは、双方の署名で「合意した」証拠が残るからです。明示の書面と兼ねた「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の形もあります。
雇用契約書の書き方 5ステップ
- 雇用形態と入社日を入れる(有期なら契約期間満了日と、更新する場合の基準も示す)
- 職種・業務内容・勤務場所を、変更の範囲も含めて書く
- 勤務時間(休憩を含む)と休日を書く
- 給与・賃金の締切日と支払日・昇給・賞与を書く
- 退職に関する事項と社会保険を書き、2部作って双方が署名押印する
記入項目の書き方
- 雇用形態・契約期間満了日:正社員・契約社員・パート・アルバイトから選びます。期間を定める契約は、原則3年まで(高度の専門的知識等を持つ人や満60歳以上の人は5年まで)です(労働基準法14条)。更新する場合があるなら、更新の基準(通算の期間や回数に上限があればそれも)を明示します(施行規則5条)。更新の基準を書く欄は無いので、別に書面で示します。
- 職種・業務内容・勤務場所:2024年4月から、就業の場所と業務に加えて、その変更の範囲も明示します(施行規則5条1項1号の3・厚生労働省)。転勤や職種の変更がありうるなら、その範囲を書きます。
- 勤務時間・休日:始業と終業の時刻、休憩時間、休日を書きます。所定の時間を超える労働(残業)の有無と休暇も明示する事項なので(施行規則5条)、欄に書き添えるか別に示します。
- 給与・賃金締切日と支払日・昇給・賞与:基本給と手当を分けて書きます。固定残業代を払うなら、それを除いた基本給の額・何時間分でいくらか・超えた分は割増賃金を追加で払うことを書きます(厚生労働省は、求人の時にこの3つを示すよう求めています)。
- 退職に関する事項:定年、自己都合で辞める時の申出、解雇の事由を書きます(解雇の事由も明示する事項・施行規則5条1項4号)。
- 社会保険・雇用保険:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入を書きます。
書き方の注意点
- 明示の書面との関係:会社は、契約の時に労働条件を明示します。期間・更新の基準・場所と業務(変更の範囲を含む)・時間と休日・賃金・退職の事項は、書面を渡して示します(労働者が望めばFAXや電子メールなどでも可・労働基準法15条・施行規則5条)。この契約書を明示の書面と兼ねるなら、これらが全部書かれているかを確かめます。
- 就業規則との関係:就業規則の基準に達しない労働条件を定めた部分は無効になり、就業規則の基準によります(労働契約法12条)。
- 試用期間:設けるなら、書く欄は無いので別に定めます。試用期間中でも、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要ります(労働契約法16条)。
- 有期契約の無期転換:同じ会社との有期契約が通算5年を超えた労働者が申し込むと、会社は期間の定めのない契約への転換を承諾したものとみなされます(労働契約法18条)。
- 保存期間:雇入れや退職に関する書類は5年(当分の間は3年)保存します(労働基準法109条・143条)。数え始めは、労働者が退職または死亡した日です(施行規則56条)。
よくある質問
Q. 雇用契約書は必ず作らないといけませんか?
A. 法律で決まっているのは、労働条件の明示(重要な事項は書面で)です(労働基準法15条)。雇用契約書を作ることまでは決まっていませんが、労働契約法は、契約の内容をできる限り書面で確かめるものとしています(4条2項)。合意の証拠として契約書の形にしておくと、後の争いを防げます。
Q. 電子契約でも有効ですか?
A. 有効です。契約に書面は要りません(民法522条2項)。労働条件の明示も、労働者が望めば、FAXや電子メールなど(記録を出力して書面にできるもの)で行えます(労働基準法施行規則5条4項)。
Q. 契約書の内容を後から変更できますか?
A. 労働者と会社が合意すれば変えられます(労働契約法8条)。会社が合意なく就業規則を変えて、労働者に不利に変えることは原則としてできません(9条。変えた就業規則を周知し、変更が合理的な場合を除く・10条)。合意は書面で残します。
参考(2026年11月時点):労働基準法(e-Gov法令検索)・労働基準法施行規則(e-Gov法令検索)・労働契約法(e-Gov法令検索)・民法(e-Gov法令検索)・令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます(厚生労働省)・固定残業代を賃金に含める場合の明示(厚生労働省のリーフレット)