工事請負契約書の書き方
工事請負契約書は、建設工事の内容と条件を定める契約書です。建設業法19条により契約は書面で行うことが義務とされ、記載すべき事項も法律で列挙されています。口約束や見積書だけで着工すると、追加工事の費用や工期の遅れをめぐって回収不能な争いになりやすく、金額の大小にかかわらず書面化が必要です。
工事請負契約書の書き方 5ステップ
- 工事内容・工事場所・工期(着工日と完成日)を書く
- 請負代金の額と、支払いの時期・方法を定める
- 設計変更や工期変更が生じたときの取り決めを書く
- 契約不適合責任の内容と期間、遅延損害金を定める
- 2部作成し、双方が署名押印して収入印紙を貼付する
記入項目の書き方
- 工事名称・工事場所・工事概要:見積書や設計図書を引用し、「別紙見積書のとおり」と紐づけます。
- 着工日・完工予定日:工事着手の時期と完成の時期。天候不良や資材遅延による延長の扱いは書き足します。
- 請負代金・支払い条件:総額と消費税。着手金・中間金・完成金の割合と支払期日を明記します。
- 設計変更:この書式に欄はないので書き足します。変更が生じた場合に、書面で協議して代金と工期を変更する旨を定めます。
- 契約不適合責任:欄はないので書き足します。対象範囲と期間を定めます。新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分は、法律で引渡しから10年の瑕疵担保責任が定められています(品確法94条)。
- 遅延損害金:欄はないので書き足します。完成が遅れた場合の率と、発注者の支払いが遅れた場合の定めを入れます。
書き方の注意点
- 建設業法19条の記載事項:工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期、工事を施工しない日や時間帯の定め(定める場合)、前金や出来形部分に対する支払いの定め、設計変更や工期変更時の取決め、天災時の損害負担、価格変動時の取決め、第三者への損害の負担、検査と引渡しの時期、代金の支払時期と方法、契約不適合責任、遅延利息や違約金、紛争解決方法など、16の項目が定められています(同条1項)。
- 収入印紙:第2号文書(請負に関する契約書)です。記載金額により階段状で、本則では1万円未満は非課税、100万円超200万円以下は400円、1,000万円超5,000万円以下は2万円など。建設工事の請負契約書には軽減措置があり、2014年(平成26年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までに作成されたものは、100万円超200万円以下は200円、1,000万円超5,000万円以下は1万円などに引き下げられています(契約金額100万円以下は軽減の対象外)。
- 住宅の10年保証:住宅の品質確保の促進等に関する法律により、新築住宅は構造耐力上主要な部分等について引渡しから10年間の瑕疵担保責任が義務づけられています。契約で短縮することはできません。
- 追加工事は必ず書面で:着工後の変更は、その都度書面で金額と工期を合意します(建設業法19条2項)。口頭のまま進めると、完成後に「聞いていない」と支払いを拒まれるおそれがあります。
- 建設業許可:許可なしで請け負えるのは「軽微な建設工事」だけで、1件の請負代金が500万円未満の工事(建築一式工事は1,500万円未満の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)を指します(建設業法3条1項ただし書・同法施行令1条の2)。これに当たらない工事を請け負うには建設業許可が必要です。
よくある質問
Q. 工事請負契約書は必ず必要ですか?
A. 建設業法19条により書面での契約が義務です(相手方の承諾を得て電子的な方法で行うこともできます。同条3項)。小規模な工事でも省略できません。
Q. 収入印紙は誰が負担しますか?
A. 契約書を共同で作成した場合、当事者が連帯して納める義務を負います(印紙税法3条2項)。どちらがどの分を負担するかは、当事者で決めておきます。
Q. 電子契約なら印紙は不要ですか?
A. 国税庁の質疑応答事例では、注文請書に代えて電子署名を付した電磁的記録をメールで送信した場合について、電磁的記録は印紙税の課税対象となる文書に含まれず、印紙税は課税されないとしています。紙の契約書を作成する場合は、その契約書が課税対象です。
参考(2026年10月時点):建設業法(e-Gov法令検索)、建設業法施行令(e-Gov法令検索)、住宅の品質確保の促進等に関する法律(e-Gov法令検索)、印紙税法(e-Gov法令検索)、国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置、国税庁 質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」