事業用賃貸借契約書の書き方
事業用賃貸借契約書は、店舗や事務所として建物を貸し借りする契約書です。借地借家法は住居用と同じく適用されます。特に原状回復の範囲(スケルトン(内装を撤去した状態)で返すかどうか)、造作買取請求権を特約で排除するかどうか、保証金の額と償却の有無の3点は、契約前に必ず確認してください。
事業用賃貸借契約書の書き方 5ステップ
- 物件を特定する(所在・階数・区画・専有面積)
- 使用目的(業種・営業形態)を明記する
- 賃料・共益費・保証金の額と、償却(敷引き)の有無を定める
- 契約期間と、普通借家か定期借家かを明示する
- 原状回復の範囲と造作買取請求権の扱いを定めて署名押印する
記入項目の書き方
- 使用目的:「飲食店(居酒屋)としての使用に限る」のように業種を書きます。借主は契約で定めた用法に従って使う義務があるため(民法616条・594条1項)、無断で業態を変えると契約違反になります。
- 物件名・区画、所在地:この書式に面積の欄はありません。面積は物件名・区画の欄に書き足し、契約面積が壁芯か内法かも明記します。賃料単価の計算根拠になります。
- 保証金:額を書きます。償却(敷引き)として一定割合を返還しない特約を付ける場合は、割合と時期を書き足します。
- 原状回復の範囲:この書式に欄はないので書き足します。「スケルトン返し」とするか「入居時の状態」とするかで費用が大きく変わります。入居時の状態を写真で残すことが重要です。
- 造作買取請求権:借地借家法33条の権利です。この書式に欄はないので、特約で排除する場合はその旨を書き足します。
- 中途解約:この書式に欄はないので、中途解約を認めるか、予告期間や違約金をどうするかを書き足します。
書き方の注意点
- 造作買取請求権とは:借主が貸主の同意を得て付加した造作(エアコン、内装設備など)を、契約終了時に時価で買い取るよう請求できる権利です(借地借家法33条)。任意規定なので特約で排除できます。排除されているかを必ず確認してください。
- 原状回復の考え方:民法621条では、通常の使用による損耗と経年変化は借主の原状回復義務から除かれています。スケルトン返しなど、これを超える負担を借主に求める場合は、特約で範囲を具体的に定めます。事業のために契約する個人は消費者契約法の「消費者」に当たらないため(同法2条1項)、同法の保護は及びません。
- 定期借家の活用:貸主にとっては期間満了で確実に終了させられる定期借家が有利です。要件(事前の書面交付と説明、書面による契約)を欠くと普通借家になります。
- 消費税がかかる:住居用の家賃は非課税ですが、事業用の建物賃貸料は課税取引です。賃料が税込か税抜かを明記します。
- 収入印紙は不要:建物の賃貸借契約書は課税文書ではありません。土地の賃貸借は第1号の2文書として課税されます。
よくある質問
Q. 事業用と住居用で契約書は分けるべきですか?
A. 分けることを勧めます。事業用の建物の賃料は消費税の課税取引で、住居用(非課税)と扱いが違うほか、原状回復の範囲・造作買取請求権・中途解約について、事業に合わせた特約を定めるためです。
Q. 保証金は全額返ってきますか?
A. 償却(敷引き)特約があると一部は返還されません。契約書で償却の割合と時期を確認してください。
Q. 途中で業種を変えられますか?
A. 使用目的を限定している場合、貸主の承諾が必要です。無断で変えると契約違反となり、解除を求められるおそれがあります。
参考(2026年10月時点):民法(e-Gov法令検索)、借地借家法(e-Gov法令検索)、消費者契約法(e-Gov法令検索)、国税庁 No.6201 非課税となる取引、印紙税法(e-Gov法令検索)