業務委託契約書の書き方
業務委託契約書は、社外に仕事を頼むときの取り決めを書面にしたものです。民法に「業務委託契約」という名前の契約は無く、中身によって請負(仕事の完成を約束する・民法632条)や準委任(事務の処理を任せる・民法656条)の決まりが当てはまります。どちらかで、報酬を請求できる時期や、成果物が契約の内容に合わない時の責任が変わるため、書き出す前にどちらに近いかを決めておきます。
業務委託契約書の書き方 5ステップ
- 委託する業務の内容と範囲を具体的に書く
- 請負か準委任かを踏まえ、成果物と完了条件を定める
- 報酬額・支払時期・支払方法を書く
- 契約開始日と終了日を入れる(中途解除・秘密保持・権利の帰属の条文はこの書式に無いので、要る時は別に書面で定める)
- 2部作成し、双方が署名押印して各1部を保管する
記入項目の書き方
- 委託者(甲)・受託者(乙):甲は会社名と代表者名、乙は会社名か屋号と氏名を書きます。乙が会社なら、氏名の欄には代表者名を書きます。
- 委託業務の内容:「◯◯に関する業務」だけでは範囲で争いになります。作業の項目・回数・納める形まで書きます。
- 成果物:納めてもらう物を書きます。何をもって完了とするか(検収の基準と期間)を書く欄は無いので、この欄に書き添えます。
- 契約開始日・契約終了日:業務を行う期間です。
- 報酬:金額と、消費税を含むか(税込・税別)を書きます。源泉徴収の対象になる報酬なら、源泉徴収した残りを払うことも書いておくと、精算で迷いません。
- 支払い条件:支払う日と方法を書きます。従業員を使わない個人など(フリーランス)に頼む時は、例の「納品完了後30日以内」のように「以内」「まで」と書くと、支払期日を定めたことになりません。「◯月◯日」のように日が決まる形で書きます(公正取引委員会)。
書き方の注意点
- この書式に入っている条文:印刷すると、入力した項目のあとに「反社会的勢力の排除」「協議解決」「合意管轄(被告の住所地の裁判所)」の3つの条文が入ります。秘密保持・権利の帰属・再委託・中途解除の条文は入っていないので、要る時は別に書面を作って定めます。
- 請負と準委任の違い:請負は、仕事の完成に対して報酬を払う約束です(民法632条)。報酬は原則として目的物の引渡しと同時に払います(633条)。完成の前に終わっても、できた部分で注文者が利益を受けるなら、その割合に応じて報酬を請求できます(634条)。準委任は、事務の処理を任せる約束です(656条)。受託者は善良な管理者の注意をもって業務を処理し(644条)、報酬は特約がある時に、原則として業務を終えた後に請求できます(648条)。成果に対して報酬を払う約束もできます(648条の2)。
- 偽装請負に注意:契約の形が請負でも、実態が労働者派遣であれば「偽装請負」となり、労働者派遣法違反になります。どちらに当たるかは、契約の形ではなく実態で判断されます(厚生労働省)。委託先の担当者に、仕事の進め方や時間を直接指示しないようにします。
- 収入印紙:請負の契約書は第2号文書で、税額は書いた契約金額で決まります(1万円未満は非課税・1万円以上100万円以下は200円・契約金額の記載が無いものは200円など)。営業者の間で請負などの取引を続けて行うための基本の契約書は第7号文書で、1通4,000円です(契約期間が3か月以内で更新の定めが無いものは除く)。どの文書に当たるかは、書いた中身で決まります(国税庁 No.7102・No.7104)。
- フリーランス法:2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、従業員を使わない個人や、代表者1人だけで従業員のいない法人に業務委託をした事業者は、給付の内容・報酬の額・支払期日などを、直ちに書面かメールなどで明示します(3条)。発注する側に従業員がいる場合(法人は役員が2人以上いる場合も)は、報酬の支払期日を、給付を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間内で定めます(4条)。
- 源泉徴収:原稿料・講演料などを個人に払う時は、支払う側が所得税と復興特別所得税を源泉徴収します(国税庁 No.2795)。給与について源泉徴収の義務が無い個人(給与を払っていない人など)が払う報酬・料金は、源泉徴収しなくてよいとされています(No.2502)。
- 権利の帰属:成果物の著作権を移すなら、その旨を別に書面で定めます。著作者人格権は譲り渡せません(著作権法59条)。翻案する権利(27条)と二次的著作物の利用の権利(28条)は、譲る目的として書かれていないと、譲った側に残ると推定されます(61条2項)。
よくある質問
Q. 契約書がなくても業務委託は成立しますか?
A. 成立します。契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面が無くても成立します(民法522条2項)。ただし、従業員を使わない個人などに業務委託をした時は、取引の条件を書面かメールなどで明示する義務があります(フリーランス法3条)。後で争いにならないよう、書面にしておきます。
Q. 収入印紙を貼らないとどうなりますか?
A. 印紙税を納めなかったことになり、本来の印紙税の額とその2倍、合わせて3倍の過怠税が徴収されます。調査で分かる前に、自分から税務署に申し出れば(印紙税不納付事実申出書)、1.1倍に軽くなります(国税庁 No.7131)。
Q. 業務委託と雇用はどう違いますか?
A. 働く人が相手の指揮監督の下で働いているか、報酬がその働きの対価かどうか(使用従属性)で判断されます。請負や委任といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容・働き方・報酬などから、一件ごとに総合的に判断されます(厚生労働省)。題名が「業務委託」でも、労働者と判断されれば労働基準法が適用されます。
参考(2026年11月時点):民法(e-Gov法令検索)・フリーランス・事業者間取引適正化等法(e-Gov法令検索)・フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)・No.7102 請負に関する契約書(国税庁)・No.7104 継続的取引の基本となる契約書(国税庁)・No.7131 印紙税を納めなかったとき(国税庁)・No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき(国税庁)・No.2502 源泉徴収義務者とは(国税庁)・「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について(厚生労働省)・労働基準法における「労働者」とは(厚生労働省)・著作権法(e-Gov法令検索)・フリーランス・事業者間取引適正化等法のリーフレット(厚生労働省)