示談書の書き方
示談書は、争いごとを裁判によらず当事者間の合意で解決したことを記録する書面です。示談は法律上和解契約(民法695条)にあたり、一度成立すると原則としてやり直せません。特に末尾に置かれる「清算条項」は、書かれていない請求権まで消してしまう強い条項なので、署名前に必ず内容を理解する必要があります。
示談書の書き方 5ステップ
- 当事者の氏名・住所と、示談の対象となる事故や事件を特定する
- 合意した解決内容(支払額・謝罪・原状回復など)を書く
- 支払方法と期日、遅れた場合の取り決めを書く
- 清算条項を入れるかどうか、留保する事項があるかを決める
- 2通作成し、双方が署名押印して各1通を保管する
記入項目の書き方
- 事案の特定:「令和◯年◯月◯日◯時頃、◯◯において発生した交通事故」のように一意に特定します。
- 解決金:金額と、何に対する支払いか(治療費・慰謝料・修理費など)を分けて書きます。
- 支払方法・期日:一括か分割か。分割なら期限の利益喪失条項(1回でも滞れば残額を一括請求できる)を入れます。
- 清算条項:「本件に関し、本示談書に定めるほか一切の債権債務がないことを相互に確認する」。これを入れると追加請求はできなくなります。
- 留保事項:後遺障害など将来判明する可能性があるものは「本件事故に起因する後遺障害が判明した場合は別途協議する」と留保します。
- 守秘義務:内容を口外しない旨を入れる場合は、範囲と期間を書きます。
書き方の注意点
- 清算条項の効力は強い:「これ以外に請求しない」という合意なので、後から損害が判明しても原則として請求できません。人身事故では特に慎重に判断すべき条項です。
- 治療中の示談は急がない:治療が終わらないうちに示談すると、その後の治療費や後遺障害の賠償を受けられなくなることがあります。症状固定を待つのが原則です。
- 公正証書にする意味:金銭の支払いについて強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、支払われない場合に裁判をせずに差押えができます。分割払いの示談では有効です。
- 未成年者の示談:未成年者本人だけの示談は取り消される可能性があります。法定代理人(親権者)が当事者として署名します。
- 刑事事件との関係:刑事事件で示談が成立すると、不起訴や量刑で考慮されることがあります。ただし示談したから必ず不起訴になるわけではありません。
- 収入印紙:示談書は原則として不課税ですが、金銭の受領を証する文言を含むと第17号文書として課税されることがあります。
よくある質問
Q. 示談書に署名したら撤回できますか?
A. 原則としてできません。詐欺や強迫、重要な錯誤があった場合に限り取消しを主張できる可能性があります。
Q. 示談書は手書きでも有効ですか?
A. 有効です。形式より、当事者の合意内容が明確に読み取れるかが重要です。
Q. 清算条項は必ず入れるべきですか?
A. 支払う側は入れたい条項、受け取る側は慎重に判断すべき条項です。将来の損害が読めない事案では、留保を付けることを検討してください。